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2013年7月19日 (金)

木は材木になっても生きている

博物館の台所に上げ板というのがあります。床板を取り外せるようにして、床下を物入れにする仕組みです。床下には木炭やぬかみそ桶、梅干しや漬け物を入れた甕、買い置きの醤油や酒瓶などを入れていたところです。下は直接地面なので気温の変化の影響を受けにくく、1年を通じて温度変化が少ないこと、冷暗所であることもあって貯蔵庫として重宝されていました。

1_2 この取り外す床板が「上げ板」です。来館者にはこの上げ板も上げて中をお見せし、床下収納について説明したりもします。そのときよくお話するのが、上げ板が季節によって膨張したり縮小したりするということです。いまの時季はちょうど隙間もなくぴしっと収まっていますが、空けにくいというほどではありません。ところがつい2週間くらい前の梅雨時は、湿気を吸った材がふくらんで、上げ板ならぬ「上がらない板」になるほど。床下収納をお見せするのも一苦労です。そして冬場になると、空気が乾燥しているので材は収縮し、全体で3センチくらいの隙間ができるようになります。

 この家が建って今年で62年め。材木はその前から製材されているのでしょうから、そんな昔に材木になったものが、いまも呼吸をして生きているということに驚くと同時に敬う思いになります。

 そしてそれにもまして、当時の日本では、市井の無名の大工さんたちですら、家を建てる時期によって上げ板の幅を調整していたのだということに驚かされます。

 そんなことをお話すると、お客さまも一緒になって感心されています。つい見過ごされがちな上げ板にも、そんな奥深い話が潜んでいます(ま)。

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